• 山本産業株式会社 身軽で柔軟なシステム刷新 ― カーペット製造現場の最適化とs-flowのカスタマイズ

    業種:カーペットをはじめとする床材メーカー

    お話を伺った方:山本修也様 小嶋絵理様

  • 山本産業株式会社
    貴社の事業について教えていただけますか?

    1921年に綿織物業として創業した山本産業株式会社は、カーペットを中心とした床材メーカーとして確固たる地位を築いている。ホテルやオフィス向けのカーペット、自動車用オプションマット、鉄道や航空機向けの特注品など、多岐にわたる用途に対応し、OEM供給と自社ブランド展開の両軸を持つ国内有数のカーペットメーカーとして存在感を示している。

    経営企画室 室長の山本氏は、自社の強みを「デザイン性と機能性を両立した製品を生み出す力」にあると語る。
    その言葉通り、同社では全従業員のおよそ2割を「モノづくりに携わる開発人材」が占めており、業界内でも稀有な体制を有している。
    デザイナーと技術営業が連携し、顧客と対話を重ねながら複数のデザイン案を提示し、最適な形を導き出すスタイルは、同社ならではの価値である。
    さらに、顧客の要望を形にするための試作にも積極的に取り組んでおり、こうした姿勢が高い品質を支え、厚い信頼につながっている。

    同社のもう一つの強みは、生産設備の充実にある。国内で唯一保有するトップクラスの生産設備を活用することで、デザイン性と機能性を兼ね備えた製品を安定的に供給することが可能となっている。
    また、顧客からは「配送や在庫管理の柔軟さ」に対しても高い評価を得ている。カーペットは大型かつ重量のある製品であり、納品時期も厳しく指定されることが多い。
    そのため、同社では原材料の発注から完成品の在庫管理、さらには納品日までを逆算し、綿密なシミュレーションのもとでスケジュールを行う。
    この仕組みによって、多品種・多業界への安定供給を維持しつつ、顧客ごとに異なる細やかな要望にも応えられる体制を整えている。

    山本産業の100年の歩みを支えてきたのは、「デザイン×機能性×設備」の掛け算による高品質なモノづくりと、顧客要望に柔軟に応える姿勢であった。

1. 導入前の課題

・二重管理や属人化による業務のブラックボックス化
・定量的な判断ができない仕組み
・経理とフロント部門の乖離

2. 選定の理由

・複雑な生産工程と多様な単位への対応
・コストバランスがいい
・導入支援と実務に即した追加のカスタマイズが可能

3. 導入の効果

・データ処理の柔軟性向上
・標準機能の利便性により業務の効率化
・将来展望と分析データ活用の広がり

1.導入前の課題

  • 「s-flow」導入前はどんな困りごとがありましたか?

    30年以上にわたり使い続けてきたオフコンシステムが撤退するという知らせを受け、システム刷新は待ったなしの状況となった。
    生産管理チームの小嶋氏をはじめとする5名のメンバーがプロジェクトチームを結成し、アンケートやヒアリングを通じて各部署の声を集めた結果、日常業務に潜む数々の課題が浮き彫りになった。

    第一の課題は、二重管理や属人化による業務のブラックボックス化である。
    オフコンに合わせるために無理に続けてきた30年前の業務がそのまま残り、「理由は不明だが慣習として行われている」作業が多く存在していた。
    特に生産管理・配送・経理の各業務は膨大化し、部署間の連携や引き継ぎが困難に。
    休んだ人のフォローができず、新しい人が入社しても「なぜこの業務をやるのか」説明できないまま、すぐに業務に馴染めない状況も課題だった。知見や経験のある一部の人材にしか対応できない属人的な仕組みが根強く残っていたのである。

    第二の課題は、定量的な判断の難しさである。在庫確認一つをとっても、担当者に依頼してオフコンからデータを抽出してもらう必要があり、スピーディーな意思決定を阻んでいた。出力されるデータも精度が十分でなく活かしきれないという声が多かった。

    第三の課題は、経理とフロント部門との乖離である。仕入や売上処理に必要なデータは全てオフコンを経由させなければならず、現場は「経理に必要だから」という理由だけで作業している状況が続いていた。業務全体がブラックボックス化し、整合性を取るために大きな手間が発生していたのである。
    プロジェクトチームは「身軽で柔軟な新システムを導入し、業務の根幹を支える必要がある」と結論づけ、新たなシステム検討を本格的に始めたのである。


2.選定の理由

  •                  
    「s-flow」を採用いただいた理由は何ですか?
                   

    「s-flowを採用した最大の理由は、カーペット製造ならではの複雑な業務特性に柔軟に対応できる点にある」と山本氏は述べる。
    カーペットの生産は工程が多岐にわたり、さらに糸はキログラム、カーペットはメートル、タイルカーペットは平米と、製品ごとに取り扱う単位が異なる。加えて、顧客と社内で換算方法が異なるケースも多く、業務は煩雑さを極めていた。そのため、製品に合わせた「単位変換」などのカスタマイズは不可欠と考えていた。
    しかし、検討した他システムは総じて高額なカスタマイズ費用がかかり、数年ごとの見直しが想定されるなど、コスト面で導入は現実的でなかった。
    「その点、s-flowは柔軟なカスタマイズが可能でありながらも安価。課金体系もユーザー数に基づいており明確で、コストパフォーマンスのバランスがよかったため、納得して導入を決断できた」と山本氏は振り返る。

    さらに、カーペットの生産は納期の流動性が高く、仕入先や協力会社の体制に応じて調整が不可欠である。s-flowはこうした変更にもスムーズに対応でき、部門間で同一情報を共有しながら連携を図れる。従来ブラックボックス化していた業務が可視化され、透明性を持って進められるようになった。

    導入に際しては、社内でのテスト期間を設け、不便な点や改善要望をその都度相談した。サポートデスクのチャットや電話対応は手厚く、疑問を即時解消できた。資料を交えた説明によって業界特有の要件も理解してもらえたため、安心感を持って進められたという。

    導入後も、業務効率化につながる要望が上がるたびに、必要に応じて4回にわたり追加カスタマイズを実施してきた。
    例えば、反物を小ロールに切り分けながら生産する過程では、同一柄が一つの製品番号にまとめられる一方、長さごとに異なる反番が付与される。
    s-flowには同じ情報の明細をワンクリックで複製できるように機能追加した。
    結果、登録業務が大幅に効率化した。
    そのほか、入荷数量が受注を上回った場合の入力対応など、実務に即した細やかなカスタマイズも実装している。こうした業界特有の要件に対し、スピーディーかつフレキシブルに対応できる点こそ、s-flowを選定した最大の決め手となったのである。


3.導入の効果

  • 「s-flow」導入後はどんなところが改善されましたか?

    s-flow導入によって最も大きく改善されたのは、データ処理の柔軟性である。
    従来のオフコンでは日次更新しかできず、過去データを遡れないという制約があった。特に夕方の1時間は更新処理のため入力作業が停止し、現場のフラストレーションを招いていた。さらに、一度入力したデータは修正できず、誤りがあれば最初から再入力する必要があった。
    これに対し、s-flowでは即時更新が可能であり、必要なデータをいつでも入力・閲覧できる。
    また、ワークフロー上で現在の進捗状況(状態)を確認でき、「状態」を戻すこともできるため、業務の柔軟性が飛躍的に向上した。
    「我々が『糸は生もの』と表現するように、生産現場は常に変化に対応する必要があるが、s-flowの『不可逆性のない仕組み』が実務に大きな力を発揮している」と山本氏は評価する。

    標準機能の利便性も高い。
    受注や在庫管理を経由せずに出荷から対応できる点、画面や帳票をユーザー側で設定できる点、各種マスタや帳票のインポート/エクスポート機能の充実などは、使い勝手がよい。
    s-flowは検索機能も豊富であり、確認頻度の高い抽出データを「お気に入り」として登録し、個人単位・会社全体で共有して活用できる点は特に重宝していると小嶋氏は語る。

    今後は、s-flowのデータ分析機能を活用していきたいと考えている。「せっかく豊富なデータを持てるようになったので、経営の意思決定につなげていきたい」と山本氏は展望を語る。
    さらにOEM事業を大切にしながら、評価されている品質や開発力を維持しつつ、新たな領域への挑戦も視野に入れている。生産や配送における緻密な対応は従来通り維持しながら、複雑で重たいシステムではなく、身軽で柔軟な仕組みをs-flowで実現し、顧客の多様な要望に応えられる体制を整えていく方針である。
    そして最後に、山本産業が長年培ってきた「顧客要望への柔軟な対応力」と、s-flowが持つ「柔軟なカスタマイズ性」が両輪となって機能することで、同社の次なる成長を力強く支えていくことが期待される。