コラム 諸掛とは? 会計上の処理方法や企業経営に与える影響を解説

投稿日:2026/01/15
最終更新日:2026/01/15

商品を仕入れたり販売したりする際には、商品の代金以外にも送料・保険料・梱包費など、取引に付随して発生するさまざまな費用が生じます。これらの付随費用は総称して「諸掛(しょがかり)」と呼ばれ、正しい会計処理を行わなければ在庫評価や利益計算に大きな影響を与えます。

特に中小企業では、仕入諸掛と売上諸掛を混同したり、立替金の管理があいまいになったりするケースも少なくありません。この記事では、諸掛の基本的な考え方から会計処理、経営への影響、注意すべきポイントまでをわかりやすく解説し、日々の実務で役立つ知識を整理します。

この記事で分かること
● 仕入諸掛・売上諸掛の違いと、それぞれの正しい会計処理
● 諸掛が在庫評価や利益管理、税務に与える重要な影響
● 中小企業が押さえておくべき記帳ルール・科目管理・立替処理の注意点

諸掛とは?

  • 諸掛とは、商品を仕入れたり販売したりする際に、商品の代金とは別に発生する「付随費用」をまとめた会計用語です。代表的なものには運送料・梱包費・保険料・関税などがあり、商品の移動や取引に伴って必要となる費用の総称として使われます。

    これらの諸掛は、単純な雑費ではなく「商品を取得するために不可欠なコスト」として扱う必要があります。例えば、仕入時の送料は仕入原価に含めるべき費用であり、販売時の発送費は販売費として処理するのが原則です。正しく分類・計上することで、在庫評価や利益計算の精度が高まり、企業の経営管理にも大きく役立ちます。

諸掛の種類

  • 諸掛は、大きく 「仕入諸掛」 と 「売上諸掛」 の2つに分類されます。どちらも商品取引に伴って発生する費用ですが、扱い方や会計処理が異なるため、区別しておくことが重要です。

仕入諸掛

  • 仕入諸掛とは、商品や原材料を仕入れる際に発生する付随費用のことです。具体的には、送料、梱包費、保険料、関税、通関手数料、代理店や仲介業者への手数料などがこれに該当します。特に海外取引では、通関費用や輸入に伴う手数料など、多くの仕入諸掛が発生するのが一般的です。

    仕入諸掛は、商品の取得原価(仕入原価)に含める必要があり、在庫の評価額にも直結します。この処理が正しく行われないと、売上原価や利益の計算にズレが生じてしまうため、原価管理のうえでも非常に重要な費用項目です。

売上諸掛

  • 売上諸掛とは、商品を販売・発送する際にかかる費用の総称で、発送費、梱包費、宅配便の料金、出荷時の保険料などが含まれます。これらは「販売費」として処理するのが会計上の原則であり、売上とは切り離して計上する必要があります。

    売上諸掛を売上と同じ勘定で扱ってしまうと、粗利の計算が正しく行えず、収益構造の把握が難しくなってしまいます。特に「送料無料」サービスを提供している場合でも、企業側で負担した送料は実際のコストとして確実に計上し、利益管理を適切に行うことが求められます。

諸掛の会計上の処理方法は?

  • 諸掛は「誰が負担する費用か」「仕入に関するのか、売上に関するのか」によって会計処理が大きく変わります。処理を誤ると、在庫評価・粗利計算・税務申告などにズレが生じるため、正しく区別して仕訳することが非常に重要です。ここでは、4つのケースに分けて具体的な処理方法を解説します。

自社負担の仕入諸掛

  • 自社が負担する仕入時の送料・関税・保険料などは、商品の取得原価(仕入原価)に含めて処理するのが原則です。これらは商品を入手するために不可欠な費用であるため、「仕入」として計上します。

    支払い方法に応じて、現金・預金・買掛金などで貸方処理します。最終的には損益計算書の売上原価に含まれるため、正確な計上が利益計算の精度に直結します。

    例:商品の仕入時に送料1,000円を自社負担した場合

    (借方)仕入 1,000円 /(貸方)現金 1,000円

自社負担の売上諸掛

  • 商品発送時に自社が負担する送料・梱包費・荷造費などは、「販売費」として費用計上します。売上とは切り離して処理することで、粗利を正確に算出できるようになります。

    「送料無料」のサービスを提供している場合でも、企業が実費として負担した発送費は確実に費用として計上する必要があります。これを怠ると、利益管理が不正確になり、実態よりも利益が高く見えてしまうことがあります。

    例:発送費800円を自社負担した場合

    (借方)発送費 800円 /(貸方)現金 800円

取引先負担の仕入諸掛

  • 仕入諸掛を本来は仕入先が負担すべき場合で、当社が一時的に立て替えたときは「立替金」として資産に計上します。後日、仕入先から返金を受け取るか、買掛金と相殺して清算します。

    重要なのは、取引先負担である以上、仕入原価に含めない という点です。費用化してしまうと在庫評価や原価計算に誤りが生じます。

    例:本来仕入先負担の送料1,200円を当社が立替えた場合

    (借方)立替金 1,200円 /(貸方)現金 1,200円

取引先負担の売上諸掛

  • 顧客が送料や手数料を負担する場合、当社が一時的に支払った金額は「立替金」で処理します。これは売上でも費用でもなく、単なる回収予定の金額であるためです。

    また顧客への請求書に送料を含める場合は、その金額を売掛金に合算して処理することも可能です。いずれの場合も、売上や販売費と混同しないよう、明確な区分が求められます。

    例:顧客負担の送料900円を当社が一時的に支払った場合

    (借方)立替金 900円 /(貸方)現金 900円

諸掛が企業経営に与える影響

  • 諸掛は、単なる「送料や手数料」といった付随費用ではなく、企業経営に大きく影響を与える重要なコストです。特に在庫評価・原価計算・税務処理など、財務の根本部分に関わるため、処理方法を誤ると利益計算のズレや税務リスクにつながります。

    ここでは、諸掛がどのように企業経営へ影響するのかを3つの観点から解説します。

在庫評価への影響

  • 仕入諸掛は、原則として「棚卸資産の取得原価」に含めて評価する必要があります。これは、商品の仕入に直接関連する費用であり、在庫の価値を正確に反映させるために不可欠なためです。

    もし諸掛を適切に在庫原価へ含めず、その期に費用として処理してしまうと、売上原価や利益の計算に歪みが生じます。例えば、在庫として残っている商品に関する諸掛を費用に計上すると、その期の費用が過大となり利益が過少になるケースが発生します。

    適切な在庫評価は、期間損益計算(費用収益対応の原則)を守るうえで重要であり、企業の財務情報の信頼性にも直結します。

原価計算・利益管理への影響

  • 諸掛を正しく原価に含めなければ、実際に製品や商品にかかったコストを正確に把握することができません。その結果、採算判断にズレが生じ、利益管理に大きな誤差が生まれます。

    例えば、仕入諸掛を原価に含めずに処理した場合、本来よりも安く仕入れているように見えてしまい、利益率が実態より高く見えることがあります。これは、商品ごとの利益分析や価格設定に誤りを生む原因となります。

    正しい諸掛の計上は、「どの商品が儲かっているのか」「どの工程でコストが増えているのか」を見極めるうえで欠かせない要素であり、コスト管理や戦略的な価格設定にも深く関わります。

税務上・会計基準上の影響

  • 会計基準では、棚卸資産の取得原価には付随費用(諸掛)を含めることが明確に定められています。これは日本基準(企業会計基準)だけでなく、IFRS(国際財務報告基準)でも同様です。したがって、諸掛を正しく棚卸資産へ組み入れない処理は、会計処理として誤りとなります。

    また、費用の期間配分を適切に行わないと、税務上のリスクが生じることもあります。諸掛を誤って当期の費用とした場合、仕入原価が過大となり、税務調査で否認される可能性があるため注意が必要です。

    このように、諸掛の処理は税務・会計の両面で厳密なルールが存在し、企業が適切な財務管理を行ううえでも非常に重要な項目です。

諸掛と他の費用項目との関係

  • 諸掛は、商品を仕入れたり販売したりする際に発生する“取引に付随する費用”です。一方で、企業にはさまざまな費用項目が存在し、その性質に応じて正しく区分することが求められます。中でも「販売費」と「管理費」は似ているようで異なる位置づけを持つため、諸掛との関係を理解しておくことは帳簿管理の精度を高めるうえで重要です。

販売費との関係

  • 売上諸掛(送料・梱包費・発送費など)は、会計上 「販売費」 に分類されます。これは、商品を販売するために直接必要となる費用であり、その期の費用として処理されます。

    販売費として別建てで記録することで、売上から諸掛を直接差し引かずに済み、粗利(売上総利益)を正確に把握することができます。粗利が誤ってしまうと収益構造の分析に歪みが生じるため、売上とは切り離した費用計上が非常に重要です。

    実務では、以下のような勘定科目が使われます。

    ● 発送費
    ● 荷造運賃
    ● 包装費
    ● 配送費

    これらは「販売活動に付随する費用」として位置付けられ、売上諸掛の正しい処理に欠かせない科目です。

管理費との関係

  • 管理費とは、企業全体の運営や管理に必要な費用を指し、商品の売買に直接結びつかない支出をまとめたカテゴリーです。例えば、事務所家賃、役員報酬、事務用品費、会議費などが該当します。

    一方で諸掛は、仕入や販売といった 商品取引に直接関連する費用 であり、管理費とは性質が異なります。そのため、会計処理において両者を混同しないことが非常に重要です。

    諸掛を誤って管理費に含めてしまうと、原価計算や利益分析が正確に行えなくなるだけでなく、税務上の処理としても適切ではなくなる場合があるため注意が必要です。

中小企業における諸掛の注意点

  • 諸掛は取引に付随して発生する費用の総称であり、仕入原価や販売費、在庫評価、利益計算に直接影響します。中小企業にとっては少額の諸掛であっても積み重なると大きな差となるため、正確な記帳と管理が欠かせません。

    ここでは、実務で特に注意すべき5つのポイントを解説します。

正確に記帳し費用を配分する

  • 仕入諸掛は商品の取得原価に含める必要があり、特に在庫に紐づく費用は「繰延処理」を意識することが重要です。

    支払ったタイミングではなく、対象となる商品が販売された時点で費用として認識されるため、収益との対応関係を崩さないよう慎重に管理する必要があります。不適切な計上は利益の過大・過小につながり、経営判断を誤る原因となります。

勘定科目を統一して選択する

  • 諸掛の処理では、取引内容に応じて「仕入」「発送費」「荷造運賃」など適切な勘定科目を選ぶことが欠かせません。毎期で科目がぶれると帳簿の比較ができず、管理や説明が煩雑になります。同じ内容の諸掛は一貫した科目で処理することで、会計の透明性と見やすさが向上し、内部管理もスムーズになります。

立替払いを適切に管理する

  • 取引先が負担すべき諸掛を一時的に自社が立て替える場面は珍しくありません。その場合は費用に含めず、「立替金」として資産計上するのが原則です。

    立替処理をあいまいにすると、請求漏れや回収忘れが発生し、資金繰りに影響を与える可能性があります。誰の負担かを常に明確にし、回収状況をこまめに確認することが大切です。

売上と費用を明確に区分する

  • 売上諸掛は売上高から差し引くのではなく、「販売費」として独立して計上する必要があります。例えば「送料無料」の販売であっても、送料は正しく費用として認識しないと粗利が実態より高く見えてしまいます。

    売上と費用を適切に区分することで、収益構造が正しく可視化され、改善ポイントも把握しやすくなります。

システムを活用し処理を簡便化する

  • クラウド会計ソフトや販売管理システムを活用すれば、諸掛の仕訳を自動化でき、人的ミスの削減にもつながります。少額の諸掛でも処理ルールをあらかじめ設定しておくことで、仕訳の揺れや漏れを防止できます。

    特に取引量が多い中小企業では、システム化によって業務効率が大幅に向上します。

まとめ

  • 諸掛は、商品取引に付随して発生する送料・保険料・梱包費などの費用を指し、仕入と販売のどちらに紐づくかによって会計処理が大きく異なります。仕入諸掛は在庫の取得原価に含めて処理し、売上諸掛は販売費としてその期の費用に計上することが原則です。また、誰が負担するのか(自社・取引先)によっても「立替金」などの勘定科目を使い分ける必要があります。

    さらに、諸掛は在庫評価・利益管理・税務処理にも直結するため、正しい分類と記帳を行わなければ、利益のズレや税務リスクにつながりかねません。販売費や管理費などの他の費用項目との区別も明確にし、中小企業では特に科目の統一や立替払いの管理など、日々の運用ルールを整えておくことが重要です。

    もし、諸掛を含む仕入・販売管理の業務負担が大きい、ミスを減らしたい、担当者間で処理を統一したいと感じている場合は、クラウド販売管理システムの活用がおすすめです。

    クラウド販売管理システム「s-flow」では、仕訳処理の自動化や在庫・売上データの一元管理が可能なため、諸掛の処理精度向上と業務効率化を同時に実現できます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

●コラム執筆者
クラウド販売管理システム s-flow
  • クラウド販売管理システム【s-flow】コラム編集部
  • s-flowのコラムでは、販売管理・受発注管理・在庫管理・入出金管理をはじめとした各業務や管理に関連する「お役立ち情報」をご紹介しております!