コラム 売掛金・買掛金とは? それぞれの違いや仕訳方法、メリット・デメリットを解説

投稿日:2025/12/23
最終更新日:2025/12/23

企業間取引では、代金をその場でやり取りせず、後日支払いや受け取りを行う「掛け取引」が一般的です。その中でも売掛金と買掛金は、資金繰りや経営判断に大きく影響する重要な会計項目です。売掛金は「将来代金を受け取る権利」、買掛金は「将来支払う義務」を指し、それぞれ発生の仕組みや管理のポイントを正しく理解しておくことが欠かせません。

本記事では、売掛金・買掛金の基礎から違い、仕訳、メリット・デメリットまで分かりやすく解説します。日常業務の効率化やリスク管理にも役立つ内容です。

この記事で分かること
● 売掛金・買掛金の意味、発生の仕組み、管理が重要とされる理由
● 資産と負債という立場の違いを踏まえた売掛金と買掛金の整理
● 売掛・買掛取引のメリット・デメリット、仕訳の基本的な考え方

売掛金とは?

  • 売掛金とは、商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない場合に発生する「将来支払いを受ける権利」のことです。会計上は現金と同様に資産として扱われ、貸借対照表では流動資産に計上されます。
    企業にとっては未回収の売上であり、適切に管理・回収しなければ資金繰りに影響を及ぼす重要な項目です。そのため、売掛金は経営の安定に直結する要素として、日頃から状況を把握しておく必要があります。

売掛金が発生する仕組み

  • 売掛金は、取引先との売買契約に基づき、商品やサービスを提供した時点で発生します。実際の入金は後日になるため、帳簿上では売上と同時に売掛金を計上し、発生主義に基づいて会計処理が行われます。

    その後、取引先が支払期日に代金を支払うことで売掛金は消滅し、入金として処理されます。これを「入金の消込」と呼び、売掛金管理の基本的なプロセスとなります。

売掛金管理の重要性

  • 売掛金は企業の資金管理やリスク管理に影響するため、適切な管理が欠かせません。以下では、その重要性を4つの観点から解説します。

資金繰りの安定化のため

  • 売掛金の回収が遅れると、仕入れ代金や人件費などの支払いに影響が出る可能性があります。定期的に入金スケジュールを確認し、遅延を早期に把握することで、キャッシュフローを安定させられます。

    また入金予定が明確であれば、将来の資金流入を見通しやすく、経営判断もより安全に行えるようになります。

不良債権化の防止のため

  • 売掛金が長期間回収されないまま放置されると、取引先の経営悪化や倒産により回収不能となる可能性があります。これが「貸倒れ」であり、企業にとって大きな損失につながります。

    与信管理や入金状況のチェックを継続的に行うことで、支払いが遅れている取引先をいち早く把握し、リスクを軽減することが可能になります。

経営状態の正確な把握のため

  • 売掛金は企業の経営状態を映し出す重要な指標です。売掛金が滞留している場合、請求処理の遅れや顧客とのトラブルなど、さまざまな課題が潜んでいる可能性があります。

    定期的に売掛金残高や回収率を確認することで、問題の早期発見と経営改善につなげることができます。

顧客との良好な関係維持のため

  • 売掛金の管理が不十分だと、請求内容の誤りや行き過ぎた督促が発生し、取引先との関係悪化につながる恐れがあります。

    一方で、正確な請求処理や丁寧なコミュニケーションは企業の信頼性を高め、トラブルを防止し、円滑な取引関係の構築に寄与します。売掛金管理は顧客満足にも関わる重要な業務といえます。

買掛金とは?

  • 買掛金とは、商品やサービスを仕入れたものの、まだ代金を支払っていない場合に発生する「将来支払う義務」のことです。信用取引によって生じる負債であり、貸借対照表では流動負債として計上されます。

    企業にとって買掛金は仕入活動と資金管理をつなぐ重要な指標であり、支払期日を守ることは取引先からの信用を維持するうえで欠かせません。適切な買掛金管理は、健全な資金繰りと長期的な取引関係の維持につながります。

買掛金が発生する仕組み

  • 買掛金は、仕入れ先との売買契約に基づき、商品やサービスを受け取った時点で発生します。この時点では支払いは発生せず、信用取引として扱われます。

    企業は商品を受領すると同時に仕入を費用として計上し、未払いの代金を買掛金として記録します。その後、支払期日が来たタイミングで代金を支払うと買掛金が消滅し、現金(または預金)が減少する形で会計処理が行われます。これを「支払消込」と呼び、買掛金管理の基本的なサイクルとなっています。

買掛金管理の重要性

  • 買掛金は企業の資金繰りや信用維持に直結するため、日常的な管理が非常に重要です。以下では、管理の重要性を4つの観点から解説します。

キャッシュフローの最適化のため

  • 買掛金の支払い時期を適切に管理することで、手元の資金を有効活用できます。支払スケジュールに余裕を持たせれば、資金ショートを防ぎつつ、運転資金にゆとりが生まれます。
    また、回収予定の売掛金と支払い予定の買掛金を連動させることで、資金の流れを最適化し、投資や成長のための資金を確保しやすくなります。

取引先からの信用維持のため

  • 買掛金の支払いを期日通りに行うことは、取引先との信頼関係を保つうえで基本的なマナーです。支払い遅延が続くと信用を失い、取引条件が厳しくなったり、今後の商談に悪影響が出たりする可能性があります。

    反対に、誠実な支払対応を続けることで、有利な価格交渉や柔軟な取引条件など、企業にとってプラスとなる関係構築につながる場合もあります。

不正やヒューマンエラーの防止のため

  • 買掛金管理が不十分だと、二重払い・架空請求・未払漏れなどのトラブルが発生するリスクがあります。これらは金銭的損失だけでなく、監査上の問題につながる可能性もあります。

    そのため、支払いプロセスの明確化やチェック体制の強化が重要です。会計システムの活用やダブルチェック体制の導入により、ヒューマンエラーや不正を効率的に防止できます。

経営状態の正確な把握のため

  • 買掛金の残高は、企業が抱える負債の状況を明確に示す重要な指標です。買掛金管理を徹底することで、資金繰りの見通しや支払い能力を正確に把握でき、経営判断の精度が高まります。

    また、買掛金データの分析により、仕入コスト見直しの余地や経費削減のポイントが見つかることもあり、経営改善にも役立ちます。

売掛金と買掛金の違いは?

  • 売掛金と買掛金は、どちらも掛け取引で発生する会計上の項目ですが、意味や性質は大きく異なります。売掛金は「将来代金を受け取る権利」を表す資産、買掛金は「将来代金を支払う義務」を表す負債です。

    売掛金は「入金待ち」、買掛金は「支払い待ち」と覚えると理解しやすいでしょう。また、一方の企業が売掛金を計上すると、相手の企業では同額の買掛金が発生するという関係性があります。

    以下に、両者の違いを表にまとめました。

    項目 売掛金 買掛金
    性質 資産(将来受け取る権利) 負債(将来支払う義務)
    発生する立場 商品・サービスを販売した側 商品・サービスを受け取った側
    資金の状態 入金待ち 支払い待ち
    資金の流れ 取引先から自社へお金が入る 自社から取引先へお金を払う
    会計処理のタイミング 売上発生時に計上 仕入発生時に計上

売掛金と買掛金の仕訳は?

  • 売掛金と買掛金の仕訳は、発生時と決済時で異なる処理を行います。ここでは、それぞれの流れを分かりやすく説明します。

売掛金の仕訳

  • 売掛金は、商品やサービスを提供したものの、代金を後日受け取る取引で発生します。売上が発生した時点で、企業は売上を計上すると同時に、将来受け取る金額を売掛金として記録します。

    その後、支払期日に入金が行われると、入金額を普通預金として処理し、同時に売掛金を消し込むことで、未回収分が帳簿上からなくなります。このように、売掛金は「発生時に計上し、入金時に消し込む」という流れで処理されます。

買掛金の仕訳

  • 買掛金は、商品やサービスを仕入れたものの、まだ代金を支払っていない場合に発生します。仕入の発生時点で、企業はその商品の取得費用を仕入として費用計上し、同時に未払いの代金を買掛金として記録します。

    そして、支払期日に代金を支払うと、支払いに使用した現金(または預金)の減少を帳簿に反映させるとともに、買掛金を消し込み、負債が解消された状態になります。買掛金はこのように「仕入時に計上し、支払時に消し込む」という流れで処理されます。

売掛のメリット・デメリット

  • 売掛取引は、商品やサービスを提供しても代金の受け取りを後日にする取引方法です。現金取引よりも柔軟性がある一方で、資金繰りや管理に注意が必要な側面もあります。

    ここでは、売掛取引のメリット・デメリットを具体的に解説します。

メリット

  • メリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。

取引が円滑になる

  • 売掛を導入することで、現金の受け渡しが不要になり、取引スピードが向上します。請求や入金確認といった処理をまとめて管理できるため、経理手続きの負担も軽減されます。また、顧客側にとっても支払いタイミングをまとめやすく、継続的な取引につながりやすい点も魅力です。

取引機会を拡大できる

  • 後払いが可能になることで、資金に余裕のない顧客でも商品・サービスを購入しやすくなり、販売機会を広げることができます。

    また、後払い制度は取引先から「信用されている」という印象を持たれやすく、新規取引のきっかけにもなります。現金取引のみに限定しないことで、これまでアプローチできなかった顧客層や販路の開拓にもつながります。

顧客との関係強化につながる

  • 売掛による後払いを認めることは、顧客に対する信用の表れでもあります。その信用が信頼関係を強める要因となり、優先的な取引や好条件での商談につながることもあります。長期的に安定した取引基盤を築くうえで、売掛は有効な手段となり得ます。

デメリット

  • 一方、デメリットは以下の3点が挙げられます。

キャッシュフローの悪化につながる

  • 売掛取引では、売上の計上と実際の入金のタイミングにズレが生じます。そのため、売掛金の回収よりも先に買掛金などの支払いが発生すると、一時的な資金不足に陥る可能性があります。資金ショートを避けるためには、入金予定の管理と資金繰り計画の徹底が不可欠です。

貸倒れリスクがある

  • 取引先の経営悪化や倒産により、売掛金が回収不能となるリスクがあります。これが貸倒れであり、企業にとって大きな損失につながります。与信管理を適切に行い、必要に応じて貸倒引当金を設定するなど、リスク対策が欠かせません。信用取引には常に一定のリスクが伴うことを理解しておく必要があります

管理業務の負担がある

  • 売掛取引には請求書の発行、入金確認、未払い時の督促対応など、多くの事務作業が発生します。対応が遅れると入金遅延や顧客とのトラブルにもつながりかねません。業務負担を軽減するには、販売管理システムの導入や定期的な売掛金管理が有効です。

買掛のメリット・デメリット

  • 買掛は、商品やサービスを仕入れた際に代金の支払いを後日にする取引方法です。信用取引によって仕入れの柔軟性が高まる一方で、支払管理を誤ると資金繰りに影響が出る可能性もあります。ここでは、買掛のメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

メリット

  • 買掛のメリットは以下の2点があります。

    手元の資金を温存できる

    買掛取引では、支払いまで一定の猶予期間があるため、手元資金を直ちに使わずに済みます。これにより、運転資金を他の業務に回すことができ、資金をより有効に活用できます。また、売掛金の回収タイミングと買掛金の支払いを連動させることで、資金の流れを最適化し、キャッシュフローの安定化にもつながります。支払い業務をまとめて管理できるため、資金計画も立てやすくなる点がメリットです。

    商品を安定して仕入れられる

    信用取引によって、たとえ一時的に資金が不足していても、必要な商品やサービスを安定して仕入れることができます。継続的な取引を続けることで支払い条件が緩和されたり、価格交渉の余地が生まれたりするなど、仕入れ先との関係が強化される可能性もあります。長期的に掛け取引を継続することで信頼が蓄積され、安定した供給体制を築くことができる点も大きなメリットです。

デメリット

  • 一方、デメリットとしては以下の2点が挙げられます。

    資金繰り面のリスクがある

    買掛金は支払期日が決まっているため、支払日が集中すると一時的に現金が不足するリスクがあります。また、売掛金の入金よりも買掛金の支払いが先に発生する場合、資金バランスが崩れて資金ショートを招く可能性があります。こうしたリスクを避けるためには、支払い計画の作成やキャッシュフロー管理の徹底が欠かせません。

    取引先との関係悪化のリスクがある

    支払いが遅れたり未払いが発生したりすると、取引先からの信用を損ない、取引条件が厳しくなる可能性があります。信用低下は、価格交渉や納期調整において不利な立場となるだけでなく、今後の取引が縮小されるリスクもあります。長期的な関係維持のためには、誠実な支払い対応と継続的なコミュニケーションが不可欠です。

まとめ

  • 売掛金と買掛金は、企業の日常的な取引で必ず登場する重要な会計項目です。売掛金は「将来代金を受け取る権利」として資産に分類され、買掛金は「将来支払う義務」として負債に分類されます。どちらも発生の仕組みが明確で、適切に管理することで資金繰りの安定化、信用維持、経営判断の精度向上につながります。

    また、売掛・買掛取引には取引機会の拡大や資金の有効活用といったメリットがある一方で、貸倒れリスクや資金ショートなどの注意点もあります。日々の請求・支払業務を正確に行い、状況を把握することが経営の安定には欠かせません。

    売掛金・買掛金の管理を効率化したい企業には、クラウド販売管理システム「s-flow」の活用が有効です。請求書発行や入金管理、売上・仕入の可視化など、日常業務をまとめて改善できます。

●コラム執筆者
クラウド販売管理システム s-flow
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