コラム 受注残とは?発生する主な原因やその対策、管理の重要性を解説

投稿日:2025/11/19
最終更新日:2025/11/17

企業が安定した取引を続ける上で欠かせないのが、受注状況の正確な把握です。なかでも「受注残」は、顧客からの注文のうち、まだ納品されていない分を示す重要な指標です。受注残が多いということは将来の売上が見込める反面、納期遅延や在庫不足などのリスクをはらんでいることも意味します。そのため、受注残をどのように管理し、原因を把握するかが企業の信頼性や経営安定に直結します。

本記事では、受注残の基本的な意味から、受注残高・発注残との違い、管理の重要性、そして発生する主な原因までを分かりやすく解説します。

この記事で分かること
● 「受注残」とは何かを理解し、「受注残高」や「発注残」との違いを整理できる
● 企業にとって受注残を管理する重要性(納期・売上予測・生産計画への影響)を把握できる
● 受注残が発生する主な原因(人員・仕入・管理体制・需要急増)と、それぞれの対策を学べる

受注残とは?

  • 受注残とは、顧客から注文を受けたものの、まだ納品(出荷)していない商品やサービスの数量、またはその金額を指します。「注残」と略されることもあります。つまり、すでに受け付けた注文のうち、今後対応が必要な分を示す指標です。受注残が多いということは、将来の売上がある程度確保されている状態であり、企業の収益見通しを立てる上で重要なデータとなります。

    一方で、受注残の管理を怠ると、納品の遅延や工程の混乱が発生しやすくなります。特に製造業や卸売業では、納期のずれが取引先の信用低下につながるリスクもあります。そのため、販売管理システムなどを活用し、受注から納品までの進捗を正確に把握することが欠かせません。

受注残高との違い

  • 「受注残」と「受注残高」は似ていますが、指す内容が異なります。

    受注残は、まだ納品していない「数量」や「状態」を示す言葉で、どれだけの注文が未処理なのかを把握するために使われます。

    受注残高は、その未納品分を金額換算したもので、具体的には「受注総額 − すでに売上として計上された金額」で算出されます。

    例えば、100万円分の注文のうち50万円分をすでに納品・売上計上している場合、残りの受注残高は50万円です。簡単に言えば、受注残が「数」、受注残高が「金額」という違いです。どちらも企業の業績見通しや生産計画を立てる上で欠かせない指標となります。

発注残との違い

  • 「受注残」は自社が販売側(受注側)の視点で使われる言葉です。これに対して「発注残」は、自社が購入側(発注側)の立場で、取引先に注文したものの、まだ納品されていない状態を指します。 つまり、同じ取引であっても立場によって呼び方が変わります。例えば、A社がB社に商品を発注し、B社がまだ納品していない場合、A社にとっては「発注残」、B社にとっては「受注残」となります。 このように、受注残と発注残は表裏一体の関係にあり、どちらも在庫・生産・納期を適切に管理するための重要なデータです。販売・仕入の両面から管理できる体制を整えることで、取引全体の効率化やトラブル防止につながります。

企業にとって受注残の管理が重要な理由

  • 受注残の管理は、企業の経営を安定させ、顧客からの信頼を維持するために欠かせない業務の一つです。受注残は「将来的に売上となる見込みの注文」を意味するため、その把握状況によって、納期管理や売上予測、生産計画などあらゆる経営活動に影響します。適切に管理できていれば、納品遅延の防止や業務効率化につながりますが、管理を怠ると信用低下や損失を招くリスクもあります。

    ここでは、企業が受注残を正確に管理すべき3つの理由を解説します。

納品遅延を防止するため

  • 受注残を正確に把握することで、どの注文がどの段階にあるのかを可視化でき、納期管理が徹底しやすくなります。例えば、システム上で受注ごとの進捗を確認できれば、出荷スケジュールを前倒ししたり、遅れそうな案件に早期対応したりすることが可能です。

    納期を守ることは顧客満足度の維持に直結します。予定通りに商品を納めれば取引先の信頼を得られますが、遅延が続けば信用問題に発展する恐れもあります。受注残の管理を怠らないことは、納品トラブルを防ぎ、企業の信頼性を守る上での基本的な対策といえるでしょう。

将来の売上を予測するため

  • 受注残は、将来的に売上として計上される見込みの数量や金額を示すため、経営判断において非常に重要なデータです。受注残の推移を把握することで、今後の売上計画を立てやすくなり、資金繰りや人員配置の見通しも立てられます。

    また、受注残が多い企業は、安定した需要を確保していると評価される傾向があります。投資家にとっても受注残は企業の将来性を判断する重要な指標であり、信頼性の高い財務情報として活用されます。経営者にとっても、受注残の把握は「現時点での経営健全度」を測るバロメーターといえるでしょう。

生産計画や在庫管理に役立てるため

  • 受注残の情報は、生産や在庫の最適化に直結します。受注状況をリアルタイムで把握できれば、「いつまでに」「どの製品を」「どれだけ生産するか」という生産計画を精密に立てられます。また、それに合わせて資材の調達時期を調整できるため、過剰在庫や欠品のリスクを防ぐことが可能です。

    さらに、受注残と発注残(仕入先への未納品分)を一元管理することで、在庫バランスを最適化できます。これにより、生産効率の向上とコスト削減の両立が実現し、全体の業務プロセスがスムーズになります。結果として、納期遵守率の向上やキャッシュフローの安定化にもつながるのです。

受注残が発生する主な原因と対策

  • 受注残は、顧客からの注文に対して納品が追いついていない状態を指します。企業にとっては売上の見込みがある一方で、過剰に発生すると納期遅延や信頼低下の原因にもなりかねません。受注残が発生する背景には、社内外のさまざまな要因があります。ここでは、主な4つの原因とその対策を解説します。

人員や設備の不足

  • 最も一般的な原因の一つが、人手や生産設備の不足です。製造業やサービス業では、受注が急増しても対応できるだけの人員が確保できていない場合、生産や納品の遅れが発生します。特に熟練作業員の不足やシフト調整の限界は、短期間で解消しづらい課題です。

    また、工場や倉庫のキャパシティにも限界があります。繁忙期や大型案件が重なると、設備稼働率が100%を超え、納期に遅れが生じるケースもあります。こうした状況を防ぐには、需要予測に基づいた人員配置や、外部委託の検討など柔軟な体制づくりが求められます。

仕入れトラブル

  • 原材料や部品の調達に支障が生じると、受注残が増える原因となります。仕入先の倒産や生産停止、天候・災害・国際情勢などによる物流の混乱が発生すると、自社の生産計画にも大きな影響を及ぼします。

    特に、特定の仕入先や海外工場に依存している場合は、ひとたびトラブルが起きると代替手段が確保しにくい点が課題です。こうしたリスクを軽減するためには、複数の仕入れルートを持つ「サプライチェーンの多様化」や、在庫の安全水準を見直す取り組みが重要になります。

管理体制や業務フローの問題

  • 社内の管理体制や業務フローに不備がある場合も、受注残が発生しやすくなります。営業・生産・在庫管理といった各部署の間で情報共有が不十分だと、在庫不足や生産遅れに気づくのが遅れ、納期遅延を招く可能性があります。

    また、Excelなどを使った手作業による受注管理では、入力ミスや更新漏れが生じやすく、正確な在庫状況の把握が困難です。さらに、受注・在庫・出荷システムが連携していないと、データ転記の手間が増し、業務効率が低下します。こうした課題を解決するには、販売管理システムの導入によってデータを一元管理し、リアルタイムで情報共有できる体制を整えることが効果的です。

商品需要の急増

  • 予想を上回る需要の急増も、受注残を引き起こす要因の一つです。市場トレンドの変化や広告・キャンペーンの成功により、短期間で注文が殺到するケースでは、生産・在庫体制が追いつかず受注残が発生します。

    特に季節商品や限定販売商品など、一時的に人気が集中する商材では、需要の波を正確に読めなければ供給不足に陥りやすくなります。これを防ぐには、販売データや過去の実績を活用した需要予測の精度向上、そして柔軟に生産量を調整できる体制づくりが求められます。

まとめ

  • 本記事では、受注残の基本概念から「受注残高」「発注残」との違い、管理の重要性、さらには受注残が発生する主な原因までを整理しました。受注残は、将来的な売上の見込みを示す一方で、管理が甘いと納期遅延や信用失墜の要因となります。人員・設備の不足、仕入れトラブル、管理体制の不備、そして需要急増など、複数のリスクを早期に察知できる仕組みが不可欠です。

    そうした課題を解決する手段の一つとして、クラウド販売管理システム「s-flow」の導入もご検討ください。s-flowは、販売・在庫・入出金管理などを統合し、出荷指示や発注処理の自動化、取引先通知、売上/粗利分析といった機能を備えています。クラウド型のためブラウザとインターネット環境があればいつでも利用可能であり、初期費用なしのプランも提供されています。

    さらに、s-flowは業務フローに合わせてカスタマイズ可能で、部門間の情報共有を強化しながら受注残のリアルタイム把握を実現できます。受注残管理の精度を高めたい企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

●コラム執筆者
クラウド販売管理システム s-flow
  • クラウド販売管理システム【s-flow】コラム編集部
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