コラム 原価率とは?計算方法や高いときの要因や対処法を解説

投稿日:2025/11/17
最終更新日:2025/11/17

企業経営において「利益をどれだけ効率よく生み出せているか」を測る重要な指標が「原価率」です。

原価率を把握することで、企業は自社の利益構造を客観的に分析でき、価格設定や経営戦略の見直しに役立てられます。原価率が高ければコスト増や生産性低下などの課題を示し、低ければ効率的な経営ができている証拠です。

本記事では、原価率の基本的な考え方から、計算方法、業態別の事例、そして改善策までを分かりやすく解説します。

この記事で分かること
● 「原価率」とは何か、基本的な考え方と計算方法を理解し、利益構造を数値で把握できるようになる
● 原価率が高くなる主な要因(仕入れ価格・人件費・ロス・販売価格など)と、その背景を具体的に理解できる
● 原価率を改善するための具体的な対策(仕入れ見直し・業務効率化・価格戦略など)を学び、経営改善に活かせる

原価率とは?

  • 原価率とは、商品の売上高に対して原価がどの程度の割合を占めているかを示す指標です。例えば、1,000円で販売している商品の原価が400円の場合、原価率は以下のように計算します。

    400 ÷ 1,000 × 100 = 40%

    この数値を把握することで、企業は「どの程度の利益が出ているのか」「価格設定が妥当か」を客観的に判断できます。原価率の管理は、事業を安定的に運営し、利益を最大化するうえで欠かせません。

    例えば、原価が上昇しても販売価格を据え置いたままだと、利益が減少してしまいます。
    逆に、原価率を定期的に確認し、適切な価格改定やコスト削減を行えば、利益の確保が容易になります。

    また、原価率の分析は経営改善にも役立ちます。高い原価率は仕入れコストの上昇やロスの多さを示す可能性があり、

    一方で低い原価率は効率的なコスト管理が行われていることを意味します。さらに、競合他社との比較によって、自社のコスト構造や競争力を評価することもできます。

    つまり、原価率の把握は、利益確保・経営改善・価格戦略立案のいずれにも直結する、経営上の基本指標なのです。

企業が原価率を把握しておくべき理由

  • 企業が原価率を継続的に把握すべき理由は、単なるコスト削減のためだけではありません。
    利益の確保・価格戦略の精度向上・財務の健全性の維持という3つの観点から、経営の質を高めるために不可欠です。

事業の利益を確保するため

  • 原価率は、企業の「収益性」を示す最も基本的な経営指標の一つです。売上高に対して原価がどれだけかかっているかを把握することで、事業の利益体質を客観的に評価できます。

    原価率が低ければ、少ないコストで高い利益を生み出している健全な状態といえます。
    一方で、原価率が高い状態が続く場合は、原材料費の高騰・人件費の増加・生産性の低下・ロスの多さなど、利益を圧迫する要因が潜んでいる可能性があります。

    このため、定期的に原価率を分析し、原因を特定して改善することが、利益率の向上と経営の安定化につながります。

適正な販売価格を決めるため

  • 原価率を正確に把握することは、価格設定の根拠を明確にするうえで欠かせません。
    商品やサービスの製造・提供にかかるコストを正確に把握できれば、利益を確保できる販売価格を設定できます。

    また、原価率を業界平均や競合他社と比較することで、自社の価格競争力を判断することも可能です。もし自社の原価率が他社より高い場合は、仕入れルートや生産体制などの見直しが必要になります。

    さらに、原価率をリアルタイムで把握しておくことで、原材料費の高騰や為替変動などに迅速に対応でき、スピーディーに価格改定や戦略変更を行う判断が可能になります。

財務の健全性を証明するため

  • 原価率は、企業の財務状態を示す健全性指標としても重要です。

    原価率の推移を定期的に追うことで、経営の効率性やコスト管理の精度を把握できます。生産性が向上していれば原価率は低下し、逆にコスト増が発生していれば上昇します。

    また、原価率は投資家・金融機関などのステークホルダーが企業の安定性を判断する際の重要な材料でもあります。適正な原価管理が行われている企業は、信用力が高く、資金調達の面でも有利になります。

    さらに、税務上でも正確な原価計算は重要です。原価は損金として扱われるため、正しい原価率の算出は適正な税務申告とコンプライアンス遵守につながります。

原価率の計算方法

  • 原価率は、売上高に対して原価がどの程度を占めているかを示す指標で、次のシンプルな計算式で求められます。

    原価率(%)=(原価 ÷ 売上高)× 100

    例えば、1,000円で販売した商品の原価が300円であれば、300 ÷ 1,000 × 100 = 30%となり、この商品の原価率は30%です。
    同様に、100円の商品を仕入れ価格60円で販売した場合、60 ÷ 100 × 100 = 60%となり、利益率は比較的低いことが分かります。
    このように、原価率を計算することで、商品ごとにどれだけ採算が取れているかを確認できます。

原価率が高い場合に考えられる主な要因

  • 原価率は業種や業態によって影響を受ける要因が異なります。以下では、代表的な5つのケースに分けて、どのような状況で原価率が高まるのかを具体的に見ていきましょう。

仕入れ価格が高い

  • 仕入れコストが高いと、売上に対する原価の比率が上昇し、結果として原価率が高まります。

    例えば、飲食店では高級食材を多く使用したり、発注量が過剰で在庫を抱えたりすることで、原価率が上がる傾向にあります。また小売業の場合は、卸業者から高値で仕入れている、あるいは季節外れの商品を仕入れていることが原因になることがあります。製造業では、原材料費の高騰や小ロット仕入れによる単価上昇が主な要因です。

    上記に当てはまる場合には、仕入れルートや発注量を見直すことで、原価率の改善が期待できます。

人件費が高い

  • 人件費は、製造やサービス提供に直接関わる原価として計上されるため、その比率が高いと原価率も上昇します。サービス業では、美容室やエステなど、人手を多く必要とする業態で特に人件費の影響が大きくなりがちです。
    また製造業では、各人の作業効率が悪い場合に人件費がかさみ、原価率が上がる傾向にあります。
    人件費の適正化には、業務効率化や自動化の導入、作業プロセスの見直しが有効です。

ロス率が高い

  • ロス率とは、廃棄や不良品などで失われるコストの割合を指します。これが高いほど無駄な支出が増え、原価率を押し上げます。

    例えば、飲食店では食材の廃棄やオーダーミスによる作り直しが主なロス要因です。製造業では、不良品の発生が多いと、販売できない商品のコストが原価に含まれるため、実質的な原価率が上がります。小売業では、賞味期限切れや破損による廃棄が大きな損失となります。

    在庫管理や品質管理の徹底により、ロス率を抑えることが原価率改善の鍵です。

製造やサービス提供の過程に無駄が多い

  • 生産・提供プロセスの中に無駄が多いと、効率が低下してコストが膨らみます。製造業では、設備稼働率の低下、過剰在庫、生産ラインの非効率化が典型的な問題です。

    飲食店では、調理工程が煩雑で時間がかかる場合や、作業動線が悪くスタッフの動きが非効率な場合、人件費や光熱費が増加します。

    プロセス改善やシステム導入により、業務効率を高めることが原価率の低下につながります。

販売価格が低すぎる

  • 販売価格が原価に対して低すぎると、当然ながら原価率は上昇し、利益を圧迫します。 例えば、仕入れや製造に500円かかる商品を600円で販売すると、500 ÷ 600 × 100 = 約83%となり、経費を引くとほとんど利益が残りません。 価格設定の際は、市場相場やブランド価値、顧客の価格感度を考慮し、適正な利益を確保できる価格に見直すことが重要です。

原価率を改善するには?

  • 原価率を改善するためには、単にコストを削減するだけでなく、仕入れ・人員・ロス・業務効率・価格設定といった多面的な見直しが必要です。以下では、それぞれの具体的な改善策を紹介します。

仕入れ価格や量を見直す

  • 仕入れコストの見直しは、原価率の改善に当たってまず取り組むべきことです。代替材料の活用では、品質を維持しながらより安価な原材料や食材へ切り替えることで、コストを抑えられます。

    また、仕入れ先の多様化と交渉を行い、複数業者から相見積もりを取って価格や納期を比較することで、取引条件を改善できます。

    一括大量購入によりスケールメリットを生かすのも有効です。さらに、在庫管理の効率化で過剰在庫や廃棄ロスを防ぐことで、トータルコストの削減につながります。

人員配置を見直す

  • 人件費の最適化も、原価率の低減に直結します。まず、業務の標準化と効率化を進め、無駄な作業を省くことで、少人数でも業務を回せる体制を整えます。マニュアル化や手順の明確化も有効です。

    さらに、デジタルツールの活用により、受発注や勤怠管理などの手作業を削減し、人件費を圧縮します。柔軟な人員体制を構築し、繁忙期と閑散期に応じてパート・アルバイト・業務委託などを活用することで、固定費を抑えながら効率的な運用が可能です。

ロス率を下げる

  • ロス率を下げることは、原価率の改善に直結します。在庫管理の徹底により、先入先出(FIFO)を守り、定期的な棚卸しで在庫の劣化や廃棄を防ぎます。

    また、需要予測の精度向上により、過剰な仕入れや製造を抑制します。販売データの分析を活用するのが効果的です。さらに、品質管理の強化で不良品発生を防ぎ、廃棄商品の活用(値下げ販売や二次利用)によって、損失を最小限に抑える工夫も重要です。

業務プロセスを見直す

  • 業務の流れに無駄が多いと、コストがかさみ原価率を押し上げます。

    まず、業務の可視化と改善を行い、ボトルネックや非効率な工程を特定します。次に、設備投資の検討として、自動化設備や生産管理システムの導入により、生産性を高めることが可能です。

    また、エネルギーコストの削減も見逃せません。省エネ機器やLED照明の導入、節水対策など、日常的なコスト削減も積み重ねれば大きな効果を生みます。

販売価格を見直す

  • 原価率が高い原因が「販売価格の低さ」にある場合は、価格設定の見直しが必要です。

    まず、コスト構造を正確に分析し、利益を確保できる価格を設定します。次に、付加価値の向上により、顧客が価格に納得できるような独自性や品質を打ち出しましょう。

    また、価格戦略の再構築を行い、安売り競争を避けつつ、必要に応じて値上げも検討します。原材料費が高騰している場合は、適正な価格改定が長期的な経営安定につながります。

まとめ

  • 本記事では、「原価率とは何か」「企業が原価率を継続して把握すべき理由(利益確保・適正価格設定・財務健全性)」を整理し、業態別の例や改善方法までを丁寧に解説しました。原価率は単なる数字ではなく、経営状態を映す鏡であり、これを軸に事業戦略を練ることで、利益体質の強化と持続可能な成長が可能になります。

    その中で、企業が効率的に原価率をモニタリングし、改善を加速するために有用なのが販売管理システムです。例えば、クラウド販売管理システム「s-flow」は、販売・仕入・在庫・入出金を一元管理し、業務の自動化・通知機能・経営可視化を備えた製品です。

    s-flowを導入すれば、データ入力や伝票処理といったルーチン業務を自動化でき、欠品チェックや発注案内、売上・粗利分析までをリアルタイムで把握可能になります。また、初期費用ゼロ、月額4,800円〜という価格設定(ライトプランの場合)も特徴で、小規模から中規模の事業者でも導入しやすい点も魅力です。

    原価率改善には、戦略と実行の両輪が欠かせません。s-flowのようなクラウド販売管理システムを活用すれば、日々の業務を効率化しながら、原価率という指標をリアルタイムで追える体制を構築できるでしょう。

●コラム執筆者
クラウド販売管理システム s-flow
  • クラウド販売管理システム【s-flow】コラム編集部
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