最終更新日:2026/02/13
仕掛かり品は、製造業を中心に使われる言葉ですが、建設業やIT・ソフトウェア開発など、さまざまな業種で発生する重要な管理対象です。作業途中であるがゆえに見落とされやすい。
一方、仕掛かり品の増減はキャッシュフローや原価、納期、現場の生産性に大きな影響を与えます。また会計処理や仕訳を誤ると、利益の把握や経営判断にも支障をきたしかねません。
この記事では、仕掛かり品の基本から実務・会計面までを体系的に整理し、実務に役立つ知識を分かりやすく解説します。
この記事で分かること
● 仕掛かり品の意味や業種別の具体例
● 仕掛かり品の管理が重要な理由と、増える原因
● 仕掛かり品を削減する方法や、会計処理・仕訳の考え方

目次
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仕掛かり品とは?
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仕掛かり品とは、製造や作業の工程がすでに始まっているものの、まだ完成していない状態の製品や業務を指します。原材料として保管されている段階や、完成して販売可能な状態とは異なり、工程の途中にある点が特徴です。例えば、製造業では加工途中の部品や組み立て中の製品が該当します。
すでに材料費や人件費などのコストが発生しているため、仕掛かり品の量や進捗を正確に把握することは、原価管理や資金管理の観点からも重要になります。業種を問わず、作業途中の状態を適切に管理することが求められます。
仕掛かり品の具体例
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仕掛かり品は「製造途中のモノ」だけを指す言葉ではありません。業種によって形や管理方法は異なりますが、「すでに作業やコストが発生しており、まだ完了していない状態」という点は共通しています。
ここでは、業種別に仕掛かり品の具体例を整理します。
製造業における仕掛かり品
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製造業では、原材料を投入してから完成品になるまでの間にある製品や部品が仕掛かり品に該当します。工程ごとに仕掛かりが発生するため、どの段階にあるかを把握することが重要です。
● 切削・加工途中の金属部品
● 組み立て工程の途中にある機械や製品
● 塗装・乾燥待ちの製品
● 検査・調整前の完成直前の製品これらはすでに材料費や人件費が発生しているため、在庫として正確に管理しないと原価や納期に影響します。
建設業における仕掛かり品
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建設業では、工事が完了していない状態の建設物や工事案件が仕掛かり品にあたります。工期が長期化しやすく、金額も大きくなるため、進捗管理が特に重要です。
● 基礎工事が完了し、躯体工事中の建物
● 内装工事や設備工事の途中段階にある現場
● 完成検査や引き渡し前の建築物
● 工事途中で一時中断している建設案件会計上は「未成工事支出金」として管理され、進捗に応じた原価把握が求められます。
IT・ソフトウェアにおける仕掛かり品
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IT・ソフトウェア分野では、形のある製品ではなく、作業途中の成果物やタスクが仕掛かり品に該当します。進捗が見えにくいため、意識的な管理が必要です。
● 実装途中のプログラムや機能
● テスト前・レビュー待ちのソースコード
● 開発途中で止まっているタスクやチケット
● 納品前のシステムやアプリケーションこれらも人件費や外注費がすでに発生しており、仕掛かりとして可視化することで納期遅延やコスト超過を防げます。
仕掛かり品の会計処理
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仕掛かり品は、製造や作業が途中段階にあるものの、すでにコストが発生しているため、会計上は「棚卸資産」として扱われます。完成品のように売上原価としてすぐに費用化されるわけではなく、完成または引き渡しが行われるまで、一時的に資産として計上される点が特徴です。
仕掛かり品として計上されるのは、材料費や労務費、製造間接費など、すでに発生した原価に限られます。将来発生する予定の費用は含めません。期末には、仕掛かり品の数量や進捗を確認し、正しく評価する必要があります。管理が不十分だと、利益が過大・過小に計上される原因となるため、実務・決算の両面で重要な処理といえます。
製造業では、製造途中の製品にかかった原価を「仕掛品」として計上します。例えば、材料費や労務費が発生した場合、期末時点で未完成であれば、それらを仕掛品勘定に振り替えます。
● (借方)仕掛品 XXX円
● (貸方)材料費/労務費/製造間接費 XXX円その後、製品が完成したタイミングで、仕掛品を「製品」勘定に振り替えます。最終的に製品を販売した時点で、売上原価として費用化されます。この流れを正しく処理することで、原価と利益を適切に把握できます。
建設業では、工事が完了していない段階の支出を「未成工事支出金」として管理します。工事期間が長期にわたるため、仕掛かり品の金額も大きくなりやすい点が特徴です。
● (借方)未成工事支出金 XXX円
● (貸方)現金/買掛金/賃金 XXX円工事が完成し、引き渡しが行われたタイミングで、未成工事支出金を工事原価に振り替えます。進捗や支出を正確に管理しないと、利益の計上時期にズレが生じるため注意が必要です。
仕掛かり品の管理が重要な理由
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仕掛かり品は、製造や作業の途中段階にあるため目に見えにくく、「多少増えていても問題ない」と軽視されがちです。しかし実際には、仕掛かり品の量や滞留状況は、キャッシュフローや利益、納期、さらには現場の生産性にまで大きな影響を及ぼします。
仕掛かり品を適切に管理できていない状態が続くと、経営判断の精度が下がり、現場の混乱や無駄を招く原因にもなります。ここでは、仕掛かり品の管理がなぜ重要なのかを、代表的な理由ごとに詳しく解説します。
キャッシュフローの悪化を防ぐため
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仕掛かり品が増えるということは、材料費や人件費、外注費などの支出がすでに発生しているにもかかわらず、売上として回収できていない資金が増えている状態を意味します。仕掛かり期間が長引くほど、資金は製品や作業途中の状態で滞留し、手元資金に余裕がなくなります。
特に製造業や建設業のように、完成までに時間がかかる業種では、仕掛かり品の管理が甘いと資金繰りに直接的な影響を及ぼします。仕掛かり品を適正な水準に抑え、滞留期間を短縮することは、キャッシュフローを安定させるうえで欠かせない取り組みです。
原価・利益を正しく把握するため
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仕掛かり品を正確に管理しないと、どの工程までどれだけのコストがかかっているのかが分からず、原価計算が不正確になります。仕掛かり品は会計上、棚卸資産として計上されるため、数量や金額を誤ると、利益が過大または過小に算出されるおそれがあります。
原価や利益を正しく把握できなければ、価格設定や受注判断、採算性の評価にも影響が出ます。仕掛かり品を適切に管理することは、単なる現場管理ではなく、経営判断の前提となる重要な要素といえます。
納期遅延を防ぐため
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仕掛かり品の進捗が把握できていないと、どの工程で作業が滞っているのか分からず、対応が後手に回りがちになります。その結果、特定の工程に作業が集中したり、優先順位が曖昧になったりして、納期遅延が発生しやすくなります。
仕掛かり品を工程別・案件別に管理し、進捗状況を可視化することで、ボトルネックとなっている工程を早期に発見できます。問題が小さいうちに対策を講じられるため、納期の安定化につながります。
現場の無駄・非効率を減らすため
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仕掛かり品が多い現場では、作業の中断や手待ち、やり直しといった無駄が発生しやすくなります。また「どこに何があるのか」「どの作業がどこまで進んでいるのか」が分からず、確認や探し物に時間を取られるケースも少なくありません。
仕掛かり品を適切に管理し、作業の流れを整理することで、現場の混乱を防ぎ、生産性を高めることができます。結果として、作業時間の短縮だけでなく、品質の安定や担当者の負担軽減にもつながります。
仕掛かり品が増える原因
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仕掛かり品が増える背景には、単一の原因ではなく、工程設計や計画、管理体制の歪みが複合的に影響しているケースがほとんどです。現場では「忙しいから仕方がない」と見過ごされがちですが、原因を分解して捉えることで、改善の糸口が見えてきます。
ここでは、仕掛かり品が増えやすい代表的な原因を、具体例とともに解説します。
工程ごとの処理能力に差がある
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工程ごとの処理能力に差があると、前工程で作業が進みすぎ、後工程が追いつかずに仕掛かり品が滞留します。例えば、加工工程は順調に進んでいるものの、検査工程や仕上げ工程が人手不足で止まっている場合、加工済みの部品が仕掛かりとして積み上がります。
このような状態では、前工程の作業量を増やしても全体の生産性は向上せず、仕掛かりだけが増える結果になります。特定工程がボトルネックになっていないかを把握し、工程間のバランスを調整することが重要です。
生産・作業計画が実態に合っていない
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生産計画や作業計画が現場の処理能力や実際の需要と合っていない場合、仕掛かり品は増えやすくなります。例えば、将来の需要を見込んで作業を先行させたものの、受注が伸びずに途中工程で止まってしまうケースが挙げられます。
また納期や負荷を十分に考慮せずに計画を立てると、同時に進める作業が増え、結果としてどの案件も完了しない状態に陥ります。計画は「立てやすさ」ではなく、「実行できるかどうか」を基準に見直す必要があります。
優先順位や進捗を管理できていない
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優先順位が明確でない現場では、作業が途中で止まりやすく、未完了の仕掛かり品が増えていきます。例えば、急な割り込み作業が頻発し、元の作業に戻らないまま別の案件に着手するケースです。このような状況が続くと、仕掛かりが増える一方で、完了する仕事が減っていきます。
また進捗状況が可視化されていないと、遅れや滞留に気づくのが遅れ、対応が後手に回ります。優先順位と進捗を定期的に確認できる仕組みが不可欠です。
リソースが不足・偏在している
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人手不足やスキルの偏りも、仕掛かり品が増える大きな要因です。特定の工程を担当できる人が限られている場合、その人が忙しくなると作業が止まり、仕掛かりが一気に滞留します。
例えば、ベテラン社員しか対応できない工程や、特定の資格が必要な作業がある場合、リソースの偏在がボトルネックになります。また繁忙期に人員が不足したり、急な欠員が出たりすると、計画どおりに作業が進まず仕掛かりが増えやすくなります。
手戻り・品質トラブルが多い
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手戻りや品質トラブルが多い現場では、仕掛かり品はなかなか減りません。不具合が見つかって修正が必要になると、作業は完了せず、途中状態のまま長期間滞留します。
さらに、仕様変更や指示の食い違いが発生すると、すでに進めた作業が無駄になり、仕掛かり品が増える原因になります。品質基準や作業内容が曖昧なまま進めていると、こうした問題が繰り返され、仕掛かりが慢性化します。
仕掛かり品を効率的に削減する方法
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仕掛かり品を削減するためには、単に「減らそう」とするのではなく、仕掛かりが増える原因に対して具体的な対策を講じることが重要です。業務の進め方や管理方法を見直し、仕掛かりが滞留しにくい仕組みを作ることで、無理なく削減につなげることができます。
ここでは、実務で取り組みやすい代表的な方法を紹介します。
小ロット・短サイクル生産に切り替える
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仕掛かり品を削減するうえで効果的なのが、小ロット・短サイクルで作業を進める方法です。一度に大量の作業に着手すると、工程途中で滞留する仕掛かり品が増えやすくなります。ロットを小さくし、完了までの期間を短縮することで、途中段階で止まる作業を減らせます。完了を優先する運用に切り替えることで、仕掛かり品の総量が抑えられ、進捗や納期の管理もしやすくなります。
標準化・ルール整備を行う
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作業手順や進め方が属人化していると、仕掛かり品は増えやすくなります。そこで重要なのが、業務の標準化とルール整備です。作業手順や判断基準を明確にし、誰が担当しても同じ流れで進められる状態を作ることで、作業の中断や手戻りを防げます。
また同時に進めてよい案件数や着手の優先順位をルール化することで、途中で止まる仕掛かり品を減らすことができます。運用面の見直しは、コストをかけずに効果を出しやすい方法です。
販売管理システムを導入する
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仕掛かり品の削減には、仕組みづくりも重要です。販売管理システムを導入することで、受注・出荷・売上情報を一元管理でき、作業の着手タイミングや進捗を把握しやすくなります。
受注状況に基づいて作業を進められるため、不要な先行作業や作り過ぎを防げます。また在庫管理や生産管理と連携することで、仕掛かり品の可視化が進み、滞留している工程を早期に発見できます。結果として、仕掛かり品の発生そのものを抑制できます。
まとめ
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仕掛かり品とは、製造や作業の途中段階にあり、すでにコストが発生しているものの、まだ完成していない状態を指します。製造業だけでなく、建設業やIT・ソフトウェア分野など、さまざまな業種で共通する重要な管理対象です。
仕掛かり品を適切に管理できていないと、キャッシュフローの悪化や原価・利益の把握ミス、納期遅延、現場の非効率といった問題につながります。一方で、小ロット・短サイクル化や業務の標準化、販売管理システムの導入などを通じて、仕掛かり品は無理なく削減できます。仕掛かり品を「見える化」し、流れを整えることが、安定した事業運営と生産性向上につながります。
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